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論文

福島第一原発港湾から流出した放射性ストロンチウム$$^{90}$$Sr($$^{89}$$Sr)量の経時変化の推定; 原発事故から2022年3月までの流出量変化の分析と福島沿岸および沖合への環境影響評価

町田 昌彦; 岩田 亜矢子; 山田 進; 乙坂 重嘉*; 小林 卓也; 船坂 英之*; 森田 貴己*

日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 22(4), p.119 - 139, 2023/11

本論文では、2013年6月から2022年3月までの福島第一原子力発電所(1F)港湾からの$$^{90}$$Srの月間流出量を、港湾内の$$^{90}$$Srのモニタリング結果からボロノイ分割法を使用して推定した。その結果、2015年の海側遮水壁閉合が、流出量の削減に最も効果的であったことがわかった。また、福島沿岸および沖合のバックグラウンドレベルから放射能濃度の上昇を観察するために必要な月間流出量を推定し、事故後の流出量の変遷と沿岸および沖合での放射能濃度の変化について議論した。これらの結果は、1Fに蓄積された処理水の今後の放流計画に対する環境影響を考慮する上で重要と考えられる。

報告書

不飽和圧縮ベントナイト中での塩水浸潤挙動データの取得

佐藤 久*; 高山 裕介; 鈴木 英明*; 佐藤 大介*

JAEA-Data/Code 2023-010, 47 Pages, 2023/09

JAEA-Data-Code-2023-010.pdf:1.45MB

高レベル放射性廃棄物の処分場を沿岸部に建設した場合、沿岸部の地下水は海水の影響を受けて塩濃度が高くなるため、海水系の地下水が緩衝材を含む人工バリアに与える影響を十分に考慮して評価する必要がある。本報告では、緩衝材が飽和に至るまでの過渡的な期間において、海水系の地下水が緩衝材中での水分や溶質の移行現象に与える影響を評価することを目的として、異なる乾燥密度の圧縮ベントナイト試料を対象に、浸潤水のNaCl濃度を変えた一次元の塩水浸潤試験を実施し、浸潤水のNaCl濃度と浸潤速度の関係や浸潤試験後の圧縮ベントナイト試料中の含水比分布データを取得した。また、浸潤試験後の試料中の塩化物イオンの濃度分布を分析することにより、不飽和な圧縮ベントナイト中での溶質の移行挙動の理解に資するデータを取得した。その結果、浸潤水のNaCl濃度が高くなるに従い浸潤は速くなり、乾燥密度1.4Mg/m$$^{3}$$から1.8Mg/m$$^{3}$$、浸潤水のNaCl濃度が0(蒸留水)から4.0mol/dm$$^{3}$$までの範囲において、浸潤時間と浸潤量の関係は浸潤水の拡散現象とみなして評価できることが確認された。また、浸潤水が蒸留水の場合、含水比は給水側から浸潤距離に応じてなだらかに低下する分布となるが、浸潤水がNaCl水溶液の場合、含水比は給水側から浸潤の先端近くまで比較的高い状態を保ちながら浸潤の先端で低下する分布となり、NaCl濃度が高くなるに従いその傾向が強くなることが確認された。浸潤試験後試料の塩化物イオン濃度の分析結果から、給水側よりも浸潤方向側の領域で給水側より塩化物イオンの濃度が部分的に高くなる現象(塩化物イオンの濃縮)が起きており、この傾向は供試体の乾燥密度が低くなるに従い強くなることや、浸潤水のNaCl濃度が高くなるに従い強くなることが確認された。また、浸潤に伴い塩化物イオンが濃縮する現象は供試体の初期含水比に依存することが確認されており、浸潤に伴う塩化物イオンの濃縮が生じない条件を設定可能な見通しが得られた。

報告書

熱-水-応力-化学連成解析モデルを用いた海水系地下水環境下における緩衝材の浸潤挙動評価(受託研究)

鈴木 英明*; 高山 裕介; 佐藤 久*; 綿引 孝宜*; 佐藤 大介*

JAEA-Research 2022-013, 41 Pages, 2023/03

JAEA-Research-2022-013.pdf:3.99MB

高レベル放射性廃棄物の地層処分における過渡期のニアフィールド状態は、熱的作用(熱輸送、熱膨張)、水理的作用(地下水浸透、温度勾配による水分移動)、力学的作用(応力変形、膨潤圧の発生)および化学的作用(物質移行、間隙水の濃縮希釈、鉱物の溶解沈澱など)などが相互に影響を及ぼし合って変化する複合的な現象が生じると考えられている。このような過渡期における複雑なニアフィールド環境を把握することを始めとして、安全評価における核種移行の初期状態の設定や、オーバーパックの腐食寿命評価に必要となるニアフィールド環境条件に関する情報の提供を目的として、熱-水-応力-化学(THMC)連成解析コード(Couplys)の開発が進められてきている。本研究では、海水系地下水環境下におけるニアフィールドの再冠水挙動の評価を適切に行うため、海水系地下水を想定した溶液を緩衝材材料に浸潤させた室内試験結果に基づき、不飽和浸透流解析と物質移行解析および地球化学解析を連成させる手法により、緩衝材の透水性が間隙水中の塩濃度に依存して変化するとした水理モデルを設定した。また、廃棄体の発熱によってオーバーパック近傍で緩衝材の水分が低下し乾燥する現象について、気液二相流解析コード(TOUGH2)を用いて、廃棄体の発熱を想定した人工バリア体系での気相の流れと水蒸気量の勾配によって生じる水蒸気移動を含む緩衝材の浸潤挙動評価を実施した。そして、得られた浸潤プロファイルに基づき、温度および間隙水飽和度の依存性を考慮した温度勾配による水分移動モデルの設定を行った。さらに、これら設定したモデルをCouplysに適用し、幌延深地層研究計画に基づき実施された人工バリア性能確認試験を対象とした解析評価を実施した。そして、原位置で計測された緩衝材の浸潤挙動に関するデータとの比較を通じてモデルの適切性を確認した。

論文

福島前面海域におけるトリチウム存在量の推定とその経時変化; 福島沿岸および沖合のトリチウム存在量と1F貯留量および年間放出管理量との比較

町田 昌彦; 岩田 亜矢子; 山田 進; 乙坂 重嘉*; 小林 卓也; 船坂 英之*; 森田 貴己*

日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 22(1), p.12 - 24, 2023/01

2013年から2021年の1月まで、福島第一原子力発電所周辺の福島沿岸と沖合という二つのエリアで、トリチウムのモニタリングデータからそのインベントリーの経時変化を推定した。それらの結果から沖合のエリアにおけるインベントリー平均量は、1Fに貯留されているトリチウムの凡そ1/5程度であり、その時間変動量は、1F貯留量の1/20程度ということが分かった。これらの結果は、既に海域に存在しているトリチウムのインベントリーが、1F貯留量の放出に際し、無視できないことを示している。また、その沖合の一定のエリアにおけるインベントリーの評価を1960年代にまで遡ると、過去には核実験により、平均して1F貯留量の4倍程のトリチウムインベントリーが1960年代に存在していた他、1960年から1980年代にかけて凡そ30年に渡り、1F貯留量と同程度かそれ以上のインベントリーが存在していたことが分かった。この事実は、過去に既に1F貯留量を瞬時に放出し当該沖合の海域に滞留するとした保守的条件より遥かにトリチウムが海洋中に存在していた時期が長期間あったことを示している。更に、トリチウムのインベントリーを千葉から宮城沖まで含めた領域に拡大し評価すると、現在、1F貯留量の凡そ半分が存在していることが分かる。ここで、トリチウムの被ばく量を魚食を通じた内部被ばくと仮定し、1F貯留量がその拡大領域にて拡散し1年滞留するとした保守的評価をすると、その量は、自然放射線からの寄与の100万分の一程度であり、殆ど無視できることが分かった。

論文

Fully chelating N$$_{3}$$O$$_{2}$$-pentadentate planar ligands designed for the strongest and selective capture of uranium from seawater

水町 匠*; 佐藤 みなみ*; 金子 政志; 竹山 知志*; 津島 悟*; 鷹尾 康一朗*

Inorganic Chemistry, 61(16), p.6175 - 6181, 2022/04

 被引用回数:2 パーセンタイル:36.89(Chemistry, Inorganic & Nuclear)

海水中のウランに対して強力かつ選択的に錯体を生成する平面五座配位子H$$_{2}$$saldian及びその誘導体を開発した。模擬海水条件において、saldian$$^{2-}$$はウランに対して非常に高い安定度定数を示し、従来開発されてきたアミドキシム型配位子よりも10桁以上の錯生成能を達成した。海水中に存在する他の夾雑イオンに対するウランの選択性についても、良好な結果が得られた。

論文

福島第一原発港湾から流出したトリチウム量の経時変化の推定; 流出量変化の要因分析と福島事故前後の日本および世界の原子力施設との排出量比較

町田 昌彦; 岩田 亜矢子; 山田 進; 乙坂 重嘉*; 小林 卓也; 船坂 英之*; 森田 貴己*

日本原子力学会和文論文誌, 21(1), p.33 - 49, 2022/03

本論文では、福島第一原子力発電所の港湾口から沿岸へと流出するトリチウム量を、港湾内のトリチウムモニタリング結果から推定し、事故当初の2011年4月から2020年3月までの凡そ9年間に渡り、月間流出量を算出した。その結果、2015年の海側遮水壁閉合により、未知の流出は殆ど抑制されたことが分かった。また、この推定量を基に、日本全体の原子力施設からのトリチウム年間排出量を求め、事故前後の排出量の変遷を議論した。その結果、2015年以降、福島第一原子力発電所からの流出量は、事故前の約半分程度となっている一方、事故後の日本全体の排出量は大きく減少していることが分かった。

論文

気液界面模擬環境における炭素鋼の腐食メカニズム

大谷 恭平; 加藤 千明

材料と環境, 70(12), p.480 - 486, 2021/12

気液交番環境で液膜に覆われる炭素鋼の表面に形成した鉄さび層の断面観察および分析より、気液交番環境で炭素鋼には外側から赤さび層($$gamma$$-FeOOH),クラスト層(Fe$$_{3}$$O$$_{4}$$),内部結晶(Fe$$_{3}$$O$$_{4}$$),内部鉄さび層から成る多層の鉄さび層が形成することを見出した。この多層構造の鉄さび層および液膜に起因して酸素還元反応は常時水中に浸漬された場合よりも加速された状態を維持していたため、炭素鋼の腐食速度は増大したと考えられる。気液交番環境における炭素鋼の腐食速度に及ぼす海水成分の影響の調査より、純水から200倍希釈人工海水までの薄い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は加速し、20倍希釈から無希釈人工海水までの濃い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は減少することを見出した。人工海水に含まれるMgやCaイオンが反応界面に析出して表面を覆うことで酸素還元反応が抑制されたため、濃度の高い人工海水中で炭素鋼の腐食が抑制されたと考えられる。

報告書

地下水流動解析コードMIG2DF第2版の開発

高井 静霞; 木村 英雄*; 打越 絵美子*; 宗像 雅広; 武田 聖司

JAEA-Data/Code 2020-007, 174 Pages, 2020/09

JAEA-Data-Code-2020-007.pdf:4.23MB

計算コードMIG2DFは、放射性廃棄物地中処分の安全評価を目的とした多孔質媒体中における地下水流・核種移行解析コードとして、平成4年に第1版が開発された。MIG2DF第1版では、2次元(鉛直断面・水平面および軸対称3次元)の有限要素法によるモデルに対し、密度を考慮した飽和-不飽和地下水流解析及び核種移行解析を行うことが可能である。一方放射性廃棄物地中処分では、長期的な地質・気候関連事象として、サイトに応じた隆起・侵食による地形変化や、沿岸域においては海水準変動に伴う塩淡境界の変化による地下水流動への影響を合わせて考慮する必要がある。こうした事象に対する評価手法を整備するために、本グループではMIG2DF第1版に対する改良、および、非定常な地形変化に対応したMIG2DFによる解析を可能とするための外部プログラムの整備を行っている。これらの開発のうち、本報告書ではMIG2DF第1版を改良した第2版について、その構成・解法・使用方法・検証計算を示す。また本報告書では、整備したMIG2DFの複数の外部プログラムのうち、地下水流路解析コード(PASS-TRAC)、解析用データセット作成コード(PASS-PRE)、および、ポスト表示コード(PASS-POST)についても構成・解法・使用方法を示す。

論文

気液交番環境中の鋼の腐食速度に及ぼす海水成分の影響

大谷 恭平; 塚田 隆; 上野 文義; 加藤 千明

材料と環境, 69(9), p.246 - 252, 2020/09

本研究では、気液交番環境における炭素鋼の腐食速度に及ぼす人工海水濃度の影響を調査し、更に人工海水濃度により異なる炭素鋼の腐食機構を明らかにすることを目的とした。その結果より、純水から200倍希釈人工海水までの薄い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は加速し、20倍希釈から無希釈人工海水までの濃い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は減少することを見出した。濃度の高い人工海水中で炭素鋼の腐食が抑制された理由は、腐食による表面近傍のpH増大に伴い人工海水中のMgやCaイオンが反応界面に析出して表面を覆うことで、酸素還元反応が抑制されたためであると考えられる。

論文

Seven-year temporal variation of caesium-137 discharge inventory from the port of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant; Continuous monthly estimation of caesium-137 discharge in the period from April 2011 to June 2018

町田 昌彦; 山田 進; 岩田 亜矢子; 乙坂 重嘉; 小林 卓也; 渡辺 将久; 船坂 英之; 森田 貴己*

Journal of Nuclear Science and Technology, 57(8), p.939 - 950, 2020/08

 被引用回数:9 パーセンタイル:71.58(Nuclear Science & Technology)

2011年4$$sim$$5月にかけて発生した東京電力ホールディングス・福島第一原子力発電所2号機及び3号機からの汚染水の海洋への直接流出以後、神田は相対的に小さいが連続的な放射性物質の流出が引き続き起こっていることを指摘している。しかし、その期間は2012年9月までであり、その後の流出量の推定についての報告はない。そこで、本論文では、その後を含めて2011年4月から2018年6月までの7年間に渡り$$^{137}$$Csの流出量を推定した結果を報告する。報告のない時期、国・東京電力ホールディングスは、流出を抑制するための努力を続け、港湾内海水の放射性核種濃度は徐々に減少している。われわれは、一月単位で$$^{137}$$Csの流出量を二つの手法、一つは神田の提案した手法だがわれわれの改良を加えた手法とボロノイ分割によるインベントリー評価法を使い評価した。それらの結果から、前者の手法は常に後者の手法と比べて保守的だが、前者の後者に対する比は1桁の範囲内であることが分かった。また、それらの推定量から簡単に沿岸域に対するインパクトを評価し、特に魚食による内部被ばく量を推定したところ、福島第一原子力発電所(1F)の海洋流出量に基づく内部被ばく分は極めて小さいことが分かった。

論文

福島第一原発港湾からの放射性セシウム137の推定流出量の変遷; 2011年4月$$sim$$2018年6月までの7年間に渡る月間流出量の推定

町田 昌彦; 山田 進; 岩田 亜矢子; 乙坂 重嘉; 小林 卓也; 渡辺 将久; 船坂 英之; 森田 貴己*

日本原子力学会和文論文誌, 18(4), p.226 - 236, 2019/12

2011年4$$sim$$5月にかけて発生した東京電力HD・福島第一原子力発電所2号機及び3号機からの汚染水の海洋への直接流出以後、神田は相対的に小さいが連続的な放射性物質の流出が引き続き起こっていることを指摘している。しかし、その期間は2012年9月までであり、その後の流出量の推定についての報告はない。そこで、本論文では、その後を含めて2011年4月から2018年6月までの7年間に渡りCs-137の流出量を推定した結果を報告する。報告のない時期、国・東京電力HDは、流出を抑制するための努力を続け、港湾内海水の放射性核種濃度は徐々に減少している。われわれは、一月単位でCs-137の流出量を二つの手法、一つは神田の提案した手法だがわれわれの改良を加えた手法とボロノイ分割によるインベントリー評価法を使い評価した。それらの結果から、前者の手法は常に後者の手法と比べて保守的だが、前者の後者に対する比は1桁の範囲内であることが分かった。また、それらの推定量から簡単に沿岸域に対するインパクトを評価し、特に魚食による内部被ばく量を推定したところ、1Fの海洋流出量に基づく内部被ばく分は極めて小さいことが分かった。

論文

Vertical distribution of $$^{129}$$I released from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant in the Kuroshio and Oyashio current areas

鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤; 川村 英之; 小林 卓也

Marine Chemistry, 204, p.163 - 171, 2018/08

 被引用回数:2 パーセンタイル:10.86(Chemistry, Multidisciplinary)

福島第一原子力発電所から放出された放射性物質の深さ方向への移行を調べる事を目的に、親潮,黒潮、及びそれらの混合海域においてヨウ素129($$^{129}$$I)の鉛直分布を明らかにした。福島第一原子力発電所起因の$$^{129}$$Iは親潮及び混合海域においては表層で、黒潮海域においては亜表層で観測された。親潮及び混合海域で観測された$$^{129}$$I/$$^{134}$$Csは福島第一原子力発電所の原子炉内のそれより高いことが明らかとなった。高い$$^{129}$$I/$$^{134}$$Csは、(1)事故時に放射性ヨウ素は放射性セシウムより放出されやすかった、(2)汚染地域から$$^{129}$$Iが再放出され、大気経由で沈着した、(3)放射性セシウムが除去された汚染水が観測地点に到達した可能性が示唆された。また亜表層で観測された福島第一原子力発電所起因の$$^{129}$$Iは黒潮続流の蛇行によって運び込まれたと考えられる。、

論文

福島の環境回復に向けた取り組み,7; 福島沿岸域における放射性セシウムの動きと存在量

乙坂 重嘉; 小林 卓也; 町田 昌彦

日本原子力学会誌ATOMO$$Sigma$$, 59(11), p.659 - 663, 2017/11

福島の環境回復に関してまとめた連載記事の一つである。福島第一原子力発電所事故によって環境に放出された放射性セシウムの約7割は海洋に運ばれたと見積もられている。政府等によるモニタリング調査に加えて、国内外の多くの機関の調査研究によって、放射性セシウムの海洋における分布や動態が浮き彫りとなってきた。時間的・空間的に連続した観測データを得ることが困難な海洋においては、数値シミュレーションが積極的に活用され、事故後に新たに得られた知見を踏まえ、さらなる改良が進められている。本論文では、福島の沿岸域におけるセシウムの動きと存在量について俯瞰し、環境回復の現状の科学的な理解を深めるとともに、今後取り組むべき課題について解説している。

論文

最新放射線化学(応用編),26; シビアアクシデント後対策のための水の放射線分解研究の展開

永石 隆二

Radioisotopes, 66(11), p.601 - 610, 2017/11

冷却水喪失事故を代表とするシビアアクシデント(過酷事故)において水の放射線分解は事故時及びその後の廃止措置、廃棄物処理・処分等で、爆発源となる水素の発生、並びに腐食等の接水材料の劣化の要因となる。さらに、福島第一原子力発電所(1F)事故では平常時には到底考えられない海水が投入されたことで、これらの現象がより複雑となった。本記事では特集「最新放射線化学」の応用編において原子力に関連した放射線化学の最新の成果として、1F事故以降進めてきた研究について、海水塩分、固体共存、工学的条件をキーワードに紹介・解説する。

論文

海水プール核沸騰素過程に関する研究

上澤 伸一郎; 小泉 安郎; 柴田 光彦; 吉田 啓之

Thermal Science and Engineering, 25(4), p.65 - 74, 2017/10

福島第一原子力発電所事故において、炉心冷却維持のために海水が注入された。炉心が海水に晒されたことはこれまで経験がないことから、海水の沸騰熱伝達特性や、海水塩析出の可否、またその析出海水塩の冷却熱伝達に及ぼす影響についての理解が求められている。本研究では、海水プール核沸騰熱伝達実験を実施し、孤立気泡域,合体気泡域,伝熱面焼損時の局所の沸騰伝熱挙動を高速度ビデオカメラによる発泡挙動の撮影や赤外線カメラによる伝熱面温度分布の計測を実施し、海水と蒸留水の核沸騰素過程の違いについて議論した。その結果、海水沸騰では蒸留水に比べて、発泡数が少なくなるとともに、発泡する気泡の径が大きくなるなど、発泡挙動に違いが見られた。また、析出物が伝熱面上に形成された場合は微細な気泡が大量に発生することが確認された。さらに10.0wt%人工海水実験では海水塩析出物によって伝熱面温度が上昇し続け(伝熱面温度の逸走)、伝熱面平均温度が1000$$^{circ}$$Cを超えたところで、伝熱面が焼損した。ただし、その伝熱面焼損は蒸留水実験のように局所の伝熱面温度の急上昇によって起きる現象ではなく、比較的緩やかな温度上昇を経て焼損した。このように海水の沸騰熱伝達は蒸留水とは異なっており、本実験結果は海水を使用した伝熱機器の安全性を考える上で重要な結果である。

論文

Radiolysis of mixed solutions of Cl$$^{-}$$ and Br$$^{-}$$ and its effect on corrosion of a low-alloy steel

端 邦樹; 井上 博之*; 小嶋 崇夫*; 笠原 茂樹; 塙 悟史; 上野 文義; 塚田 隆; 岩瀬 彰宏*

Proceedings of Symposium on Water Chemistry and Corrosion in Nuclear Power Plants in Asia 2017 (AWC 2017) (USB Flash Drive), p.304 - 314, 2017/09

NaClとNaBrの混合水溶液についてラジオリシス計算を実施し、過酸化水素生成量についてこれまでの$$gamma$$線照射実験結果との比較を行った。計算結果は実験結果をほぼ再現したが、高純度NaCl水溶液に対しては酸性条件で過小評価される傾向にあった。各化学反応に対する感度解析を実施したところ、塩化物イオン(Cl$$^{-}$$)とOHラジカル($$^{.}$$OH)との反応の初期の3反応(Cl$$^{-}$$ + $$^{.}$$OH $$rightarrow$$ ClOH$$^{.-}$$、ClOH$$^{.-}$$ $$rightarrow$$ Cl$$^{-}$$ + $$^{.}$$OH、ClOH$$^{.-}$$ + H$$^{+}$$ $$rightarrow$$ Cl$$^{.}$$ + H$$_{2}$$O)の速度定数の変化によって過酸化水素量は大きく変化した。本結果はこれらの化学反応の速度定数の正確な評価が海水のようなNaClを含む水溶液のラジオリシス計算の信頼性向上に重要であることを示している。さらに低合金鋼SQV2Aを用いた$$gamma$$線照射下浸漬試験も実施し、NaClやNaBrが鋼材の照射下腐食に与える影響について調べた。基本的には腐食速度の変化は過酸化水素発生量の変化に追随したが、アルカリ性条件ではpH11付近で腐食速度が極大値をとり、12以上では高い過酸化水素濃度であるのに腐食がほとんど進行しなくなった。これは不働態皮膜が形成しているためであると考えられた。

論文

海水塩析出物を伴う海水の流動沸騰熱伝達に関する研究

上澤 伸一郎; 小泉 安郎; 柴田 光彦; 永武 拓; 吉田 啓之

混相流, 31(2), p.162 - 170, 2017/06

東京電力福島第一原子力発電所事故では、非常用冷却水の注水・除熱機能が失われたため海水が注水された。しかし、炉内への海水注入は行われたことがなく、海水による燃料集合体の冷却は検討されていない。本研究では、海水を用いてプール核沸騰実験を実施し、伝熱面温度と伝熱面上の海水塩析出層厚さの測定を行い、海水塩析出物が核沸騰熱伝達へ与える影響について評価した。また、燃料棒と同様な寸法の内管加熱部を持つ鉛直二重管流路での上向き強制流動沸騰実験を実施し、海水の流動沸騰への影響についても議論した。その結果、高濃度の人工海水では、一定かつ低い熱流束であっても壁面過熱度が次第に増加し、既存の伝熱評価式から外れる、伝熱面温度の逸走が起きることを確認した。海水塩析出層厚さの測定から、この伝熱面温度の逸走は、伝熱面上に海水塩の1つである硫酸カルシウムが析出し、時間とともに析出層が厚くなることにより、表面までの熱抵抗が増加して起きる現象であると考えられる。また、海水塩濃度が高いほど、より低い熱流束で伝熱面温度の逸走が起きており、海水塩の伝熱面上での析出は、伝熱面近傍の海水塩濃度が関係すると考えられる。流動沸騰条件では、下流では海水の濃縮が進むため、下流の伝熱面にはプール核沸騰実験よりも低い熱流束で海水塩が析出し、伝熱面温度の逸走が発生することを確認した。

論文

海水プール核沸騰素過程に関する研究

上澤 伸一郎; 小泉 安郎; 柴田 光彦; 吉田 啓之

第54回日本伝熱シンポジウム講演論文集(CD-ROM), 8 Pages, 2017/05

東京電力福島第一原子力発電所事故時の海水注入が伝熱流動へ与える影響を、その物理現象を含めて理解するため、海水及び蒸留水を用いてプール核沸騰実験を行い、プール核沸騰素過程に与える海水の影響について検討した。その結果、海水を用いた場合、沸騰核が減少した。この沸騰核の減少は、沸騰や二次気泡の形成、及び熱伝達表面の過熱度の増加に影響を及ぼすことを確認した。また、濃縮された海水では、海水塩析出層が伝熱面上に形成され、その厚さの増加に伴って熱抵抗が増加し、加熱面上の沸騰による冷却性能が大幅に低下することで、伝熱面が焼損することを確認した。これは、蒸留水での伝熱面焼損とは異なる物理機構であり、海水の場合は蒸留水よりも低い発熱量でも伝熱面が焼損する可能性がある。

論文

析出物を伴う懸濁液プール核沸騰熱伝達に関する研究

上澤 伸一郎; 小泉 安郎; 柴田 光彦; 吉田 啓之

Thermal Science and Engineering, 25(2), p.17 - 26, 2017/04

東京電力福島第一原子力発電所事故時の海水注入が伝熱流動へ与える影響を理解するため、伝熱面上の海水塩析出物が沸騰熱伝達へ与える影響の把握を目的とした海水プール核沸騰熱伝達実験を実施した。また、伝熱面に析出物が伴うという共通点を持つナノ流体のプール核沸騰熱伝達実験も実施し、両流体の熱伝達機構の共通点と相違点について議論した。その結果、海水では特定の熱流束を境に一定の熱流束であるにもかかわらず、伝熱面温度が非定常に増加し、限界熱流束の低下が示された。ナノ流体については蒸留水よりも高い熱流束で伝熱面焼損を起こしており、既存研究と同様に限界熱流束の向上を示唆した結果が得られた。この違いは伝熱面上の析出物の構造の違いによるものと考えられる。海水の場合、析出物は熱伝導率の低い硫酸カルシウムであり、時間とともに析出層が厚くなることを確認された。その析出層厚さが増加することで熱抵抗が増加し、熱伝達率ならびに限界熱流束が低下したと考えられる。ナノ流体の場合には、伝熱面上にナノ粒子層が析出したが、その表面は、海水塩析出物とは異なり、多数のマイクロスケールの溝が形成されていることが確認された。その溝を通して液が伝熱面に供給されることで、限界熱流束が向上したと推定される。このように、海水とナノ流体では、共に析出物を伴う流体であっても、その析出物の構造の違いによって沸騰熱伝達へ与える影響は異なる。

論文

Dissolved radiocaesium in seawater off the coast of Fukushima during 2013-2015

福田 美保*; 青野 辰雄*; 山崎 慎之介*; 西川 淳*; 乙坂 重嘉; 石丸 隆*; 神田 譲太*

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 311(2), p.1479 - 1484, 2017/02

 被引用回数:6 パーセンタイル:51.46(Chemistry, Analytical)

福島第一原子力発電所(福島第一原発)近傍における海水中の放射性セシウム分布の決定要因を明らかにするため、2013年から2015年にかけて福島第一原発から10km圏内の7観測点で得られた海水中の$$^{137}$$Cs濃度と、海水の特性(塩分、水温、ポテンシャル密度)との関係についてまとめた。海水中の$$^{137}$$Cs濃度は原発近傍で高く、また比較的低密度の海水で高かった。この結果から、河川水や福島第一原発港湾内からの海水の流入が、局所的に高い$$^{137}$$Cs濃度の増加をもたらしたと推測される。なお、これらの比較的高い$$^{137}$$Cs濃度を持つ海水は、より低密度の海水の下層へと貫入することにより、水深20$$sim$$50m付近まで運ばれる場合があることが明らかになった。

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